長文ですいませんが、会長からのごあいさつ_藤井と申します
令和5年度総会にて石川県読書会連絡協議会の副会長を受け、この度、巻頭言(小冊子「読書会とともに」)に拙文を書くことになり恐縮しております。
私は定年退職後野々市市の野露読書会に参加して10年ばかりの新参者で、来年40周年となる野々市市読書会連絡協議会の創設者との面識もなく、ただ文芸愛好者の一人として毎回読書会に参加しているだけの者です。
定年後の居場所探しで知った読書会は、元々金沢からの転入組でもあった私の地域デビューでもありました。その時の会は衰退気味で私の参加は大いに歓迎され、しばらくすると会長を奥田さんから受け継ぐことになりました。
すると図書館協議会の委員と文化協会の常任理事職も自動的に引き受けることになりいきなり忙しくなりました。ですから図書館や市の生涯学習課との交流も浅く、地域の読書会活動のベテランばかりいらっしゃる中で私の読書ないし読書会のやり方は異色かもしれません。
自分の読書歴を振り返ると、高校1年の時に世界文学全集を一冊づつ読んだことが気づいてみると異色な存在になっている気がします。あの頃の読書は思春期独特のはまり方をしていて、今でも懐かしく思い返しています。主人公に自分を移し入れほとんど一体化して夢中で読みました。
よく言えば追体験なのでしょうが、受験勉強にも影響して十日程登校拒否にもなり、なかなかしんどい思いもしました。でもその時の体験が良くも悪くも自分を作っているし、今も読書を習慣にできていると思います。
どの読書会もそうですが会員の構成はほとんど女性です。女性の方がコミュニケーション能力が高いからで、男性は感想を話すのは苦手だし意見の違いを認めて協調することも不得手です。
これまで「本を読む仲間の集い」で助言役を3回ほど担当したことがありますが、感想には男女差が現れる気がします。男性は読んだテキストの解説になりがちで説明的な言葉を使うのに対して、女性の方は自分の感じたままを自分の言葉で話されることが多いように思います。
感想と言えば後者の方が適しているのですが、男性は自分なりの評価を加えたくなるのでしょう。私は読書会に男性がもっと参加していただきたい思いが強いのですが、現状の読書会を改善する必要はないでしょうか?そのことも頭にあって以前、小林秀雄の「読書について」を読んだことがあって、批評が読者側に立っているのに気づいたのです。
批評家というのはどこか偉そうなイメージがありますが、そこを少し我慢して素直に批評を受け止めてみると、読みは深くできて作者が書く以上に問題を理解している場合があります。書くという表現よりも読むという理解の方が優位に立てる場合もあると気づくと、小説を読まされて何となく面白かったで終わらない読み方もできて、広い意味の学習ができるようになると思ったのです。そういう学習ができると分かれば、男性会員も増えるのじゃないかと思います。
先ごろ野々市の図書館協議会で西田幾多郎記念館を見学したことがあって、見学コースの最初の方は哲学に親しんでもらうための漫画があって、西田が影響を受けた哲学者の紹介がありました。私はヘーゲルもありますかと学芸員に訊いたら、「ありますよ、お好きなんですか?」と応えられ、「最近好きになりました」と答えたら嬉しそうな顔をされていました。
その学芸員は女性の方でした。多分その方も学芸員なのでヘーゲルは読んでいらっしゃるのでしょう。西田幾多郎は終生ヘーゲルの本は座右の書にしていたみたいです。なぜこの話を出したかというと、女性は哲学のような難しい本を端から敬遠してしまう傾向があって、考えるという経験と出会うチャンスを逃していると感じるからです。
小説を読んで何か分からないところがあると答えを求めて調べようとしますが、調べる前に考えることが大切だという思いがあります。私がヘーゲルを好きになったのは、加藤尚武という学者の解説でヘーゲルの弁証法が分かったからです。そのガイドがなければいつまでもチンプンカンカンのままです。逆に言えば適切なガイド役を見つければ理解は可能なのです。
野々市の主催で数年前に唯川恵をお招きしてトークショーがあって、「淳子のてっぺん」を書くのに自らエベレストに登った話をされていました。それまで登山の経験が浅くても田部井淳子の小説を書く以上はエベレストに登る必要があると決断されたという作家魂に感心した次第でした。
読書も登山に似たところがあります。難しいと尻込みしていたら小説のエベレストを読む機会は永遠に来ないことになります。少しずつでも難しい読書経験で練習しておかないと、読書の頂点には届かないでしょう。但し練習には適切なコーチというか先生が必要で、自分の求めに応えるガイドの助けがないといくら何でも無理というものです。
私は野々市で「源氏物語を読む会」を有志でやっていて、先日「蜻蛉」の巻まで読みました。もうあと2帖を残すだけです。ひと月に1帖づつ読むというペースで途中休んだ月もありましたが4年かかりました。さすがに源氏ロスになって終わるのが惜しい気にもなっています。冒頭にも書きましたが、来年野々市市読書会連絡協議会は40周年になります。継続こそ力だと仲間と噛みしめています。
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