向田邦子「鮒」読書会
昨日、石川読書グループ研究会の読書会に参加した。私よりやや先輩の女史ばかりの読書会なのだが、七尾の久川さんが毎月遠方から参加されていてまた読書家でもあって話が合ったので会員になった。今回は向田邦子の「鮒」を取り上げた。昭和56年五二歳の時、台湾で航空機事故で亡くなられた年に出版された短編小説である。知的な美人で頭の回転が早そうなイメージがあって私はこれまで縁がなく素通りの作家だった。中流家庭の普通の平和な日常に、ふとした異物として「鮒」が現れる。父の愛人が間遠になった相手の家庭に、別れの挨拶とばかりに本人が届けに来たものだった。しらばっくれる父親におっとりした性格の妻は深く追求しようとはせず、息子は鮒に興味を持ち父の届け出先探しに付き合う。十一の息子は子供ながらに父に寛容だった。年頃の姉は生理的に臭い鮒を嫌った。父と息子が鮒の持ち主が引っ越してしまったのを確認して帰宅してみると、鮒は死んでいた。「ママが洗剤でも入れたんじゃないの」と息子が追求し、父は一瞬愛人が霞ヶ浦に飛び込んだと想像する。これを作者は終始ユーモラスに展開させるのだが、久川さんの作家の出自の家庭環境が解き明かされると実は作家自身の私小説にも思えてくるほどの、中身の濃い物語との感想を持った。(ここでは向田自身は息子の視点)
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